ジストニア?聞きなれない病名ですね。 筋肉が勝手に動いてしまう病気です。
「動かしたくても動かない」または、「だまっていたいのに勝手に動いてしまう」という症状がでるのがジストニアです。
今回は、発声時頸部ジストニアについてと、さまざまなジストニアについて調べてみました。
ジストニアとは?
ジストニアとは、自分の意思とは関係なく、体の一部が「不随意運動」といって、勝手に動いてしまう病気のことをいいます。
はっきりした原因はわかっていませんが、過労や、精神的ストレスと深い関係があるといわれております。
脳の一部に異常がおこることが発症の原因といわれておりますが、知能に問題がおこることや、視力、聴力などの感覚機能に障害がでることもなく、生命に関わる病気ではありません。
ジストニアは大きく分けて3種類あります。
1.全身性ジストニア
ジストニアの症状が全身にあらわれ、「特発性捻転ジストニア」とも呼ばれております。
小児期(20歳前)から発症し、進行性で、遺伝によるものと考えられております。
体全体に、不随意な動きがおこり、最終的には車いすが必要になる場合もあります。
精神疾患がおこることはありません。
2.局所性ジストニア(フォーカル・ジストニア)
局所性ジストニアは、フォーカル・ジストニアとも呼ばれ、「局所性」ともいわれるだけあり、ジストニアの症状が、体の一部分にのみおこります。
手などの筋肉に指令を送るべき、脳の一部分が異常をおこすことによって、指令をうまく伝達できず、動かしたい部位を思い通りに動かせない、または、勝手な動きをするという症状がでます。
主に、20歳以降の成人になってから発症するといわれています。
局所性ジストニアにもいろいろなものがあります。代表的なものをいくつかご紹介いたします。
痙性斜頸(けいせいしゃけい)
痙性斜頸は、頸部ジストニアとも呼ばれ、首が上や下、右や左のいずれかに傾く、または、ねじれる、震えるといった、不随意運動をおこす、特発性の局所性ジストニアです。
【適した診療科目】
神経内科、脳神経外科、整形外科など。
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)
両まぶたの筋肉がけいれんと収縮をおこし、まぶたが開けにくく、勝手に閉じようとする、突発性の局所性ジストニア。
【症状】
- まぶしい
- 目が乾く
- まぶたがぴくぴく動く
- 目を開けていられない
などがあり、進行した場合、完全に目を開けていられない状態になり、事実上の失明状態になることもあります。
【適した診療科目】
・眼科
眼科を受診して、検査によって脳に異常があった場合などは、脳神経外科などを紹介してもらうこともできます。
書痙
字を書こうとすると、手が震えたりして、きちんと書けない。字を書くほうの手を、もう片方の手で支えないと字が書けないなどの症状がでる、局所性ジストニア。
字を書くことを仕事としている人が発症しやすいため、職業性ジストニアとも呼ばれています。
【症状】
- 字を書こうとすると、手が震える(平常時は震えない)
- 手がしびれる
- 手に過剰な力が入るためこわばる
- 手が脱力する
【適した診療科目】
・神経内科
痙攣性発声障害(咽頭ジストニア)
声を出そうとすると、喉が詰まったような感じになり、うまく声を出せない、咽頭や、声帯の筋肉におこる局所性ジストニア。
【症状】
- 第一声が「うっ」っと詰まる
- 声が途切れ途切れになる
- 力み声になる
- しゃがれた声になる
- 息漏れしたような声になる
などがあります。
歌手の黒木渚さん、アナウンサーの平井理央さんもなられたそうです。
また、ゴールデンボンバーの鬼龍院翔さんも、3年半もの間、このジストニアの治療を行っていたそうです。
以前、鬼龍院さんは、喉のポリープ手術も受けられたことがあるそうですね。
そう。でも喉のポリープ手術と、ジストニアの治療は全くの別物だよ。
発声時頸部ジストニア
声を出そうとすると、頸部(首)の筋肉にジストニアの症状がおき、今まで出せていた声も、うまく出せなくなる局所性ジストニアです。発声障害のひとつでもあります。
こちらのジストニアは、体の疲労やストレスなどが原因と考えられているため、初期に治療を開始すれば、比較的治りやすいといわれております。
【症状】
- 声を出そうとすると首周辺の筋肉が硬直する
- 発声しようとすると(主に高音)首に力が入り声が出せない
コブクロの小渕健太郎さんが、この病気を発症したことがあったね。
そうだね。2011年に半年間、治療に専念するため音楽活動を休止されていたんだよね。
動作特異性ジストニア(職業性ジストニア)
体の一部分におこる「局所性ジストニア」の一種なのですが、その名の通り、職業病ともいえます。
音楽家や、職人などの、特定の部位の、過剰な繰り返し作業(体の一部分の酷使)によって、発症するといわれております。
筋肉の不随意な動きによって、本来動かすべき部位が動かず、動かなくてよい部位が勝手に動くといった症状がおこります。
ピアニストやギタリストなら、指や手に痙縮がおこり、演奏ができなくなる、また、フルート奏者やトランぺッターなら口に、など、どの職業の人にもおこりえます。
「その職業にとって一番必要な部位がうまく動かなくなる病気」であるため、精神的な要因も考えられるとされています。
書痙も職業性ジストニアの一種です。
米米クラブのサックスの、フラッシュ金子こと金子隆博さんと、RADWIMPSのドラマー・山口智史さんも、こちらの職業性ジストニアによって休止した経緯があります。
山口さんは、バスドラムを踏む右足が思うように動かせなくなることがあったとのことです。
その道のプロなのに、辛いですね・・・。
そうなんだよね、一番使わなくてはならない部位だからね。
3.分節性ジストニア(髄節性ジストニア)
局所性のジストニアの症状が、複数の部位にあらわれることをいいます。
発声時頸部ジストニアとけいれん性発声障害は同じ?
咽頭にジストニアの症状があらわれる「咽頭ジストニア」が、いわゆる「けいれん性発声障害」のことをいいます。
発声(主に高音)する時に頸部(首)に、ジストニアの症状があらわれるのが「頸部ジストニア」ということになります。
ジストニア症状があらわれる部位の違いはありますが、同じ「発声障害」という点で、症状も共通点があるようです。
発声時頸部ジストニアの治療法は?
適した診療科目
・神経内科
・脳神経外科
・精神科
・リハビリテーション科
など
治療法
抗コリン剤の内服
副交感神経を抑制します。
ボツリヌス毒素を注射
異常な動きをしている筋肉にボツリヌス毒を注射して、麻痺させ、筋肉の緊張をゆるめます。しかし、効果が切れれば元に戻り、声がかすれるなどの副作用もあります。
鍼治療
血行を良くし、筋肉の緊張をほぐす効果があるといわれております。
理学療法(リハビリテーション)
言語聴覚士による、リハビリテーションをおこなうこともあります。
しかし、症状が出ている部位の筋力を訓練することは、ジストニアの症状を悪化させることも多いということもわかってきました。
ちなみに、音楽家(歌手も演奏家も)は、自分がジストニアと知らずに、「歌(演奏)が下手になった」と焦り、さらに無理な練習を重ねることにより、症状が悪化してしまうという悪循環にはまりやすいといわれております。
ストレスコントロール(心理療法)
ジストニアの症状は、心身のストレスによっても悪化するため、場合によっては心理療法を行う場合があります。
発声障害を診断・治療ができる病院は限られている
上記のように、さまざまな治療方法がありますが、正しく診断できる病院もまだまだ少なく、いまだ決定的な治療法が確立されていないため、根治は難しいといわれております。
全国の発声障害の診断、治療ができる病院が紹介されているサイトがこちらです。
楽に声を出す方法
あまり根をつめて練習しすぎても、症状が悪化してよくありませんが、少しでも前に進みたい方のために、「首の力を抜きつつ楽に声を出す」ためのエクササイズ動画をご紹介いたします。
ぜひご参考になさっていただければと思います。
声が「力んでしまう」時って、肩は上がり、お腹もへっこんでることが多いよ。
体全体が「ちじこまったような」「固まったような」状態だね。
その力が抜けて、「体が広がっている感じ」を「体に覚えさせる」のが重要ですね。
その他の発声障害については、こちらの記事にも書いてありますのでご参考になさってください。